建設業許可をこれから取得しようとするときは、様々な許可の要件を満たしていることを証明する必要があります。許可要件は大きく「人の要件」と「物(金)の要件」に分かれますが、経営業務の管理責任者は「人の要件」で最初に確認しなければならない許可要件になります。
経営業務の管理責任者(略して「経管(けいかん)」と呼ばれることも多いです)は、次のように定義されます。
経営業務の管理責任者
業務を執行する社員、取締役、執行役もしくは法人格のある各種の組合等の理事等、個人の事業主または支配人その他の支店長、営業所長等営業取引上対外的に責任を有する地位にあって、経営業務の執行等建設業の経営業務について総合的に管理した経験を有する者
どうでしょうか、定義を見てもなんのことだかよく分からないかもしれません。簡単に言ってしまうと、経営業務の管理責任者の要件を満たすのは「建設業を扱う会社で取締役など役員として管理した経験のある人」のことです。たとえば建設業許可を取得している建設会社の常勤取締役に5年(あるいは6年)就任していた人は、建設会社の経営業務を総合的に管理していたとみなされるので、経営業務の管理責任者になることができます。
建設業許可を取得すると、500万円以上の大きな工事も請け負うことができるようになりますので、そういった業務を会社の取締役等としてしっかり経験してきた人を会社の取締役に常勤させましょう、そういう意味合いが強い許可要件です。
実際に建設業許可を取得する場面においては、たとえば個人事業主として5年以上内装工事業に携わってきた人が内装工事の建設業許可を取得する際、経営業務の管理責任者として申請を行うようなケースが多いですが、これまで建設業に全く関わってこなかった会社が新たに建設業許可を取得しようとするとき、許可を持っていた会社の取締役として5年以上就任していた役員経験のある人を新たに常勤取締役として就任させることによって、経営業務の管理責任者の要件を満たすといったケースもまた多いです。
経営業務の管理責任者の「常勤性」
経営業務の管理責任者には役員としての常勤性が求められますので、会社の本店などに文字通り「常勤している」ことが必要です。
個人事業主1人の事業で建設業許可を取得する場合、個人事業主が常勤していないということは通常考えられないため、経営業務の管理責任者の「常勤性」はほとんど問題になりません。同様に、一人社長の会社で社長自らが経営業務の管理責任者となる場合も(その社長が他に会社を経営したり他社の役員に就任しているなどの事情がない限り)、経営業務の管理責任者の常勤性が問題になることは稀です。
常勤性が問題になることが多いのは、建設業許可を取得しようとする会社に複数の役員がいる場合(その中の誰かを経営業務の管理責任者に据える場合)や、建設業許可を取得するために新しい取締役等を会社役員に就任させる場合です。
経管に就任予定の人が他社の常勤役員や代表取締役になっている場合
経営業務の管理責任者の要件でもっとも問題になりやすいといってよいのが、これから経営業務の管理責任者(経管)に就任しようとする人が、他社の常勤役員や他社代表取締役を兼任しているケースです。
まず、他社で常勤取締役になっている人は、それ以外の会社に「常勤している」と言えなくなるため、経営業務の管理責任者の要件を満たしません。逆に言えば、他社で就任している取締役が「非常勤」であることを証明できれば、経営業務の管理責任者の要件を満たす可能性が出てきます。
また、他社で代表取締役に就任している人も、通常、代表取締役はその会社に常勤していますから経営業務の管理責任者の要件を満たしません(ただし、代表取締役が2名以上いる会社の場合は例外的な扱いが可能なケースもあります)。
常勤性の証明
常勤性はまず健康保険証などで証明することになりますが、住民票上の住所と会社の本店に距離がある場合は常勤性が疑われることになりますから、より客観的な資料で証明していく必要が出てきます。
どんな資料をどれだけ用意すれば証明といえるのかについては、建設業許可を取得する都道府県や、申請者の状況等によって異なってきます。
専任技術者との兼任
なお、経営業務の管理責任者には常勤性が求められますが、専任技術者にも専任性が求められます。この2つの「人の要件」ですが、同じ会社内の同じ営業所であれば、兼任することができます(本店の経営業務管理責任者に就任する人が、同時に本店の専任技術者にも就任する場合など)。
個人事業主が建設業許可を取得するケースや、1人社長の会社で建設業許可を取得するケースでは、
- 個人事業主=経営業務の管理責任者=専任技術者
- 代表取締役=経営業務の管理責任者=専任技術者
といった具合に、すべてを同一人物が兼任して建設業許可の申請を行うことも非常に多いです。
経営業務の管理責任者と人事異動
経営業務の管理責任者は建設業許可を取得する上で、また許可を維持していく上でも重要な役職となりますが、比較的規模の大きな会社では許可要件となっている経営業務の管理責任者について失念したまま、その他の要因によって人事異動を行ってしまう(たとえば、経営業務の管理責任者に就任している役員を取締役から退任させてしまう)危険があります。
建設業許可を取得している会社での人事異動等については、経営業務の管理責任者や専任技術者といった許可の取得や維持に不可欠な「人の要件」が欠けてしまわないように、許可の管理を行っていくことが大切です。