建設業許可をこれから取得する場合、そして取得した建設業許可を維持する場合、人の要件として「経営業務の管理責任者」と合わせて設置を求められるのが「専任技術者」です。
専任技術者は、許可業種に応じた資格や経験を有する人を、全ての営業所に置かなければならないため、多少規模の大きな建設会社さんでは問題になりやすい要件の一つとなっています。
どんな人が専任技術者になれるのか
まず「どんな人が専任技術者になれるか」ですが、その条件は大きく「資格」と「経験」に分かれます。
資格を有する者
許可を受けようとする(または取得している許可の)建設工事に関して、一定の資格を取得していることや学校の卒業証明書を有していることで証明します。
簡単にいってしまうと、決められた指定の資格を持っている人や、指定の学部・学科を卒業している人が、建設業許可の専任技術者になることができます。
中でも、建築士や土木施工管理技士などの国家資格を有する人がいるケースでは、建設業許可上の専任技術者としての要件を証明することが容易ですから、それだけ許可の取得に関する手続きもスムーズになりやすい傾向があります。
実務経験を有する者
専任技術者の証明としては、国家資格や学部の卒業で証明する方法のほかに、許可を受けようとする建設業にかかる建設工事に関して、10年以上の実務経験を有することを証明する方法があります。
国家資格や指定の学部・学科の卒業と異なり、資格者証や卒業証明書などがあれば証明可能というような簡潔な流れでの証明ができませんので、実務経験で証明していく場合には10年分の資料の収集や整頓が必須です。
「個人事業として10年以上建設業に携わってきたので、そろそろ許可を取りたい」といったケースでは、手元に10年分の経験を証明できるだけの資料が残っているかが重要となりますし、また「10年以上の実務経験がある人を雇用するので、専任技術者としたい」といったケースでも、他社で10年以上実務に携わっていたことが証明できる資料を用意できるか、なかなか難しいこともあります。
資格で証明する場合はまだしも、実務経験で証明する場合には「こんな方法でも証明が可能」という様々な方法が検討できますから、場合によっては行政書士など専門家に相談して打開策を検討するのも一つの手となります。
専任技術者の専任性について
専任技術者はその名称のとおり、「専任」であることが前提です。
会社内の他の仕事がメインで、片手間に専任技術者として仕事をするということは認められていませんし、他社に勤めている人や個人事業を営んでいる人、他社の常勤役員に就任している人なども原則、専任技術者になることができません。
他の許可や免許において専任性を求められている責任者に就いている場合も、基本的に専任技術者になることができません。たとえば宅建業免許における専任の宅地建物取引士である人や、建築士事務所登録上の管理建築士となっている場合などがそれに該当します。
もっとも、同じ会社の同じ営業所内であれば、建設業許可上の専任技術者と宅建業免許上の専任の宅地建物取引士を兼ねることが認められる場合もありますので、兼任させなければ専任技術者の設置が難しいというケースでは、許可申請先の都道府県で例外的な扱いとなる条件を満たしているか、予め確認しておくほうがよいでしょう。
常勤性の証明
専任技術者はその営業所に常勤していることが求められますが、それらの証明手段としては通常、住民登録している住所から営業所まで問題なく通勤可能であること、会社の社会保険に加入していて給与も問題ない額が支払われていること、などによって確認されることになります。
住民登録上の住所から営業所まで、多少距離が遠い場合には通勤定期券など捕捉資料を求められるケースもあります。
また、たとえば住宅ローンなどの関係で住民票を他に移せない状況の中、会社の都合で住民登録している住所から直接通うことが難しい営業所への勤務を命じられているというケースも往々にしてあると思いますが、そのような場合には、営業所に通勤可能な場所に一時的な部屋を借りている資料等で証明していくなどの方法が考えられます。
実務経験の証明や常勤性が証明できず許可が取れない事態を防ぐために
建設業許可の専任技術者の要件では、上でも少し触れたとおり10年の実務経験で証明するケースや、常勤性を証明する場面で適切な資料が用意できずに許可が受けられないという状況も起こりえます。
本来、適切な資料を分かりやすく整頓して用意すれば問題なく許可が受けられるのに、そこに不備があって行政窓口で申請を受理してもらえなくなってしまう事態は非常にもったいないことです。
実務経験を証明するための資料の収集や選別に悩まれたときや、常勤性が証明できるか微妙だと思われた際は、建設業許可の申請手続きに詳しい(様々な申請実績を持つ)行政書士に相談して、申請手続き全般のコンサルティングや代行をしてもらうことも検討してみてください。
「建設業許可の申請なんて自分でもできる」と同業の方に言われることも多いかもしれませんが、それはごく簡単に申請が完了する状況が元から整っていたからという理由も考えられます。ケースによっては専門家である行政書士でも難儀する許可申請というのもありますので、お困りの際にはお電話・メールにてご相談ください。