宅地建物取引士の増員や交代するときにどんな手続きが必要?(変更届の解説)

宅地建物取引業を営む不動産会社(宅建業者)で宅地建物取引士の増員や交代するときは、不動産会社と宅地建物取引士個人がそれぞれ個別に手続きを行う必要があります。手続きを怠ると、業務停止処分や罰則が科される可能性があるため、正確で迅速な対応が求められます。

本記事では、宅地建物取引士の設置義務と、具体的な手続きの流れについて詳しく解説します。

宅地建物取引士の設置義務

宅地建物取引業者には、事務所ごとに「専任」の宅地建物取引士を設置することが義務付けられています。この設置義務は、宅建業に従事する人員の5人に1人以上の割合で、成年者である専任の宅地建物取引士を配置する必要があるというものです。この要件を満たさなくなると、2週間以内に必要な措置を講じなければならず、怠ると行政処分の対象となります。

事務所ごとに設置する宅地建物取引士の人数は、許可権者である都道府県知事などが常に把握していなければならないため、宅建業者が宅地建物取引士の増員や交代した場合には、速やかに変更届を提出する義務があります。

専任の宅地建物取引士とは

専任の宅地建物取引士とは何か、おさらいしておきましょう。

宅地建物取引士とは、宅地建物取引業法に基づき、宅地建物取引士証の交付を受けた者を指します。単に宅建試験に合格しただけでは宅地建物取引士とはみなされず、宅地建物取引士証の取得が必要です。この取引証の交付には一定の手続きと時間がかかるため、宅建に合格しただけの人を雇用しても、設置義務を満たすことはできません。

また、「専任」とは、常勤で勤務することを意味します。一般的には、営業時間中に常時勤務できる状態を指し、アルバイトや非常勤の従業員は専任の宅地建物取引士として認められません。

宅地建物取引業者は適切な人員配置と労務管理を行い、専任の宅地建物取引士の要件を満たすようにする必要があります。

宅地建物取引士の増員や交代するときはどのような手続きが必要になるのか?

宅地建物取引士の増員や交代するときは2種類の手続きが必要になります。

具体的には、

  • 不動産会社(宅建業者)が行う手続き
  • 宅地建物取引士個人が行うべき手続き

です。

不動産会社(宅建業者)は、許可権者に対して、現在どれだけの宅建士を雇っているか届け出ているため、変更届を提出する必要があります。

また、宅地建物取引士個人も、現在どこで勤務しているかを資格登録のある都道府県に届け出しているため、変更届を提出する必要があります。

この2種類の手続きは、どちらを先にやるべきかという順番があるため、注意が必要です。

専任の宅地建物取引士が退任(退職)する場合

専任の宅地建物取引士が退任(退職)する場合は、不動産会社(宅建業者)と宅地建物取引士個人がそれぞれ個別に手続きを行います。

手続きの流れとしては、不動産会社(宅建業者)が先に行い、その後、宅地建物取引士個人が退職した旨の届出を行います。

不動産会社(宅建業者)が行う手続き

不動産会社(宅建業者)は、自社で働いていた宅地建物取引士が退任(退職)した旨の変更届を許可権者に提出します。

届出に必要な書類は次のとおりです。

  • 宅地建物取引業者名簿登載事項変更届出書……変更があった事項のみ記入する。
  • 専任の取引士設置証明書……宅地建物取引士の退任(退職)後も設置義務を満たしていることを証明します。

変更届の提出期限は、変更があった時から30日以内です。

また、保証協会に加入している場合は、同様の手続きを保証協会でも行う必要があります。

宅地建物取引士個人が行う手続き

宅地建物取引士個人は、働いていた不動産会社(宅建業者)を退職した旨の変更登録申請書を資格登録のある都道府県に提出します。

変更登録申請に必要な書類は次のとおりです。

  • 宅地建物取引士資格登録簿変更登録申請書
  • 宅地建物取引士証
  • 退職証明書等(退職日が記載されており、代表者印のあるもの)

変更登録申請書の提出期限については特に設けられていませんが、遅滞なく行うことが求められています。

なお、宅地建物取引士個人が行う手続きは、不動産会社(宅建業者)が代行する手続きではないですし、不動産会社(宅建業者)の手続きにより自動的に反映されるものでもありません。

そのため、宅地建物取引士個人が直接、行う必要があることに注意しましょう。この手続きを怠ると、次の会社で専任の宅地建物取引士として働くことができなくなります。

専任の宅地建物取引士が就任(入社)する場合

専任の宅地建物取引士が就任(入社)する場合も、不動産会社(宅建業者)と宅地建物取引士個人がそれぞれ個別に手続きを行います。

手続きの流れとしては、宅地建物取引士個人が新たな勤務先の届出を行い、その後、不動産会社(宅建業者)において、専任の宅地建物取引士が就任(入社)した旨の届出を行います。

宅地建物取引士個人が行う手続き

宅地建物取引士個人は、新たに不動産会社(宅建業者)で働くことになった旨の変更登録申請書を資格登録のある都道府県に提出します。

変更登録申請に必要な書類は次のとおりです。

  • 宅地建物取引士資格登録簿変更登録申請書
  • 宅地建物取引士証
  • 入社証明書(入社日が記載されており、代表者印のあるもの)

変更登録申請書の提出期限については特に設けられていませんが、遅滞なく行うことが求められています。一般的には、入社後速やかに行うべきでしょう。

不動産会社(宅建業者)が行う手続き

不動産会社(宅建業者)は、新たに専任の宅地建物取引士が就任(入社)した旨の変更届を許可権者に提出します。

届出に必要な書類は次のとおりです。

  • 宅地建物取引業者名簿登載事項変更届出書……変更があった事項のみ記入する。
  • 専任の取引士設置証明書……専任の宅地建物取引士の設置義務を満たしていることを証明します。
  • 略歴書……就任を含む現在までの職歴を詳細に記入します。
  • 顔写真貼付用紙……縦4cm×横3cm・6か月以内に撮影したものとの指定があります。また、取引士証の有効期限を記入します。
  • 宅地建物取引士資格登録簿変更登録申請書の写し……変更事項の確認のために必要になることがあります。

退任(退職)の場合よりも提出書類が多いため、注意しましょう。

変更届の提出期限は、変更があった時から30日以内です。

なお、保証協会に加入している場合は、同様の手続きを保証協会でも行う必要があります。

宅地建物取引士の設置義務を満たしていない場合

専任の宅地建物取引士が退任(退職)したことで、法定数を満たさない状態になった場合は、不動産会社(宅建業者)はすぐに是正措置を講じなければなりません。

是正措置のタイムリミットは、法定数が不足した日から2週間以内です。

そして、是正措置を講じた後で30日以内に変更届を提出する必要があります。

もしも、法定数を満たさない状態のまま、営業を続けていた場合は、次のような措置を受けてしまうことがあります。

  • 都道府県知事等から、1年以内の期間を定めて業務の全部又は一部の停止を命じられる。
  • 不動産会社(宅建業者)が100万円以下の罰金に処せられてしまう。

最近では、様々な業界で人手不足に陥っており、特に中小企業では、人材獲得が難しい状況が生じています。不動産業界もその状況は同じです。そのため、採用担当者としては、事務所ごとの専任の宅地建物取引士の数に常に気を配り、法定数を満たさない状態が生じないようにすることが大切です。

まとめ

宅地建物取引士の増員や交代は、不動産会社にとって避けて通れない重要なプロセスです。しかし、その手続きは複雑であり、不動産会社と宅地建物取引士個人の双方が適切に対応することが求められます。これらの手続きを怠ると、宅地建物取引業者としての信頼を失うだけでなく、業務停止処分や罰則を受けるリスクがあります。

行政書士事務所では、こうした宅地建物取引士に関する各種手続きをサポートし、企業が法的要件を確実に満たすことをお手伝いしています。手続きの順番や必要書類について詳しく知りたい方、あるいは手続きが煩雑で困っている方は、ぜひ一度ご相談ください。行政手続きの専門家が、スムーズな手続きをサポートし、企業の事業運営を支援いたします。お問い合わせはお気軽にどうぞ。

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